ラジオネームは即興でつける

今年最初の記事で既に1月が終わっているとは,いやはや,時の流れは早いものですね。それまで私は日本海側にいたのですが,雪が全く降らないのはどうなっているのかという思いで今に至ります。近年はアニメを観ることがめっきり少なくなり,むしろ Web ラジオをよく聴いて過ごしています。私は同じものを何度も繰り返し聴くタチなので,聴いている番組数は少ないです。

ラジオというメディアの特徴は,大抵の番組にてリスナーからのメールを募集しており,なおかつ,それが番組の構成要素でもあるという双方向性にあります。私自身も時々メールを送って多少は読まれたことがあります。私としてはペンネーム(もしくは pseudonym)をもって目立つことなく,自分だけで密かに読まれたことの喜びを噛みしめる方がいいと思っています。ただ,自分の拙いメールが読まれることに恥ずかしさもあり,また直接的な干渉を好ましく思っていないこともあり,積極的に送る方ではありません。

そういうわけで,メールを送る頻度は本ブログの更新頻度くらいなもので,毎回初めて送るような感覚です。題名を回収すると,ラジオネームは送るに際して即興でつけます。同時期でも番組が違えば名前を変えて送ります。メール数に貢献しつつ,かといってメール職人にはならず,自分だけの密かな楽しみにするには,そのやり方が最善だと考えています。

話は変わりまして,おそらく昨日であるところの2020年2月2日には,『音泉祭り』なる5時間超のステージイベントが開催されていたはずです。私としては音泉ジュニアの活躍が見どころだったと思います。

ギター歴2ヶ月半の二人組ユニット『KANPAI』(飯田友子&村井美里:アイムエンタープライズ)の弾き語りは,番組内で既に高まっていた期待を超えるものでした。まずはお二人とも歌がお上手!それをギターを弾きながら,それも単にコードを鳴らすだけでなく,私の知らないアレとかソレとかまで弾きこなして,何と言っていいことやら。飯田氏がジュニアにいるのは度々突っ込まれていますが,お二人ともご卒業でいいのではないかと。今後は声優として,演技者としてご活躍なさることを確信します。


ameblo.jp


以上,音泉祭りエア参加勢の感想でした。

ジュニアの番組は他に3つあり,上の先輩&後輩組と比べて,フラットでガチャガチャやっている雰囲気が伝わってくるものばかりで楽しかったです。なんと,復活希望ラジオを募集(〆切:2月11日),しかも,メール数だけでなく熱量を考慮するとのことで,「よっしゃ,やったろうやないけ!」と意気込んでいるところです。もっとも,意気込みだけで何でもやれるなら,本ブログは週2刊になっていたはずですが。反省。*1

音泉キング「下野紘」のラジオ きみはもちろん、<音泉>ファミリーだよね? | インターネットラジオステーション<音泉>

私の推し番組は,湊元りょう(ホーリーピーク,天草出身)氏と卯野春香(ホーリーピーク)氏の『聖ブラ』*2組に,昭和の京都からタイムスリップしてきた関西弁の兄ちゃん・坂下拓郎(俳協,昭和73年生まれ?)氏を加えて放送された『ひまゲー』です。番組のコンセプトは「客の来ない駄菓子屋で,暇だから駄菓子を食べながらゲームで遊ぶ。ついでに黒歴史を浄化し,昭和を懐かしむ」という,企画会議がどう運んでこうなったのかというアレです。実際始まってみれば,近所の子どもたちが集まってワーワーやっている感覚の,ただひたすら楽しい番組となりました。音泉の中では『だれ?らじ』と同じくらい楽しみにしていた番組でした。とは言うものの,『#すぐめし』(雨宮夕夏:アイムエンタープライズ,星谷美緒:俳協,守屋享香:IAMエージェンシー)も自由気ままに料理したりつまみ食いしたりしつつ,隙あらば寸劇を挟むのが面白かったので,こちらも捨てがたいのですが。

それとは別に,ジュニアの中では単体の番組を持たなかったものの,徳留慎乃佑(アイムエンタープライズ)くんの天声は世界に響きわたるべきです。とりあえず何も知らずにボイスサンプルを聴いてください。しかし,アイムエンタープライズからは,音泉キングの下野紘さんを始めとして数多く出向されていますが,それでいて個々が埋もれていないのが凄いです。ジュニアの番組『カラオケ男子会』で内に秘めた闘志を爆発させるが如く吹っ切れた歌唱を披露されえていた佐藤元くんも,今回のステージで爪痕を残されたと聞き及んでいます。

最後に,音泉祭りで高田憂希&中島唯(マウスプロモーション)両氏の新番組『ゆうきとゆいのラジオで2人暮らし♡』が発表され,同時に配信開始されました。これはもう歓喜せざるを得ない!プレミアム限定番組だが,既になっているので問題なし!番組単位の課金ではないので追加料金もなし!素晴らしい!

ゆうきとゆいのラジオで2人暮らし♡ | インターネットラジオステーション<音泉>

そんなこんなで,今年も耳*3に声優の声を流し込んでいることは変わらなさそうです。

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*1:遅筆ゆえ,1記事書くのに8時間以上かかったりするので,今後も実行は無理だと思いますが。

*2:『聖なるブラックゾーン』:1年と少し前に配信されていた卯野&湊元両氏の単発企画番組。黒歴史浄化コーナーはキングラジオ内のお試し番組から始まり,『聖ブラ』から『ひまゲー』に継承された。

*3:ざらしの耳には耳たぶがなく穴が空いているだけ。

偽物の銀貨を当てろ・その2:偽物の重さがわからない場合

問題を解く前に改めて述べると,100枚の銀貨の中に偽物(本物と重さだけが異なる)が1枚混ざっていて,それを天秤だけを使って当てるというものでした。ただし,天秤は5回までしか使うことができません。

前回は,偽物の銀貨が本物より重いことがわかっているという条件のもとで,それが可能だということを,具体的な方法を示すことによって証明しました。

そして今回は,偽物の銀貨が本物より重いか軽いかわからないという条件のもとで,しかし天秤は同じく5回使うだけで偽物を当てることが可能であることを,やはり具体的な方法を示すことによって証明します。

この場合で鍵になるのは,銀貨が12枚のときです。そのときは,天秤を3回使うだけで必ず偽物を見つけることができて,それが重いか軽いかまでわかるのです。その難関さえクリアしてしまえば,前節の方法論を適用することができて上手くいくのです。

前回と同様に,最初のステップでは,銀貨の全体から天秤に乗せるものの集合 AB を取り出します。それらは互いに交わりがなく,必ず同じ枚数の銀貨からなるものとします。残りの銀貨の集合を C とします。C が含む銀貨の枚数は A のそれと異なる場合もあります。銀貨の集合を分けたら,A を左の皿に,B を右の皿に乗せて,天秤を1回使います。

銀貨12枚ならば天秤3回で十分

この場合は銀貨の集合が3等分できるので,その通り ABC それぞれに4枚ずつ銀貨を分けます。そして,天秤で1回目の測定を行います。

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今回は偽物の重さが本物と異なることしか事前情報がないため,測定結果から判断できることは次の通りです:

  1. \gt ならば,偽物は A または B の中にある。C の銀貨はすべて本物
  2. \lt ならば,偽物は A または B の中にある。C の銀貨はすべて本物
  3. = ならば,偽物は C の中にある。AB の銀貨はすべて本物

今回のような重さがわからない状況では,偽物を特定するために本物であることがわかっている銀貨を利用することが重要となります。前節の100枚の場合に,本物とわかっている銀貨はその場にある限り自由に使ってよいということを議論しました。そのために,先の比較では,すべて本物であることがわかっている集合にも言及しました。

偽物が C の中にある場合

まずは当たりがついている場合について,偽物を当てる方法を示します。C の銀貨に名前をつけて c_1c_2c_3c_4 とします。ただし,この時点では C の銀貨のどれも区別できていないことを断っておきます。

2回目の測定では,本物とわかっている銀貨を再利用します。C の中から3枚 c_1c_2c_3 を取り出して左の皿に,「A の中から3枚」取り出して右の皿に乗せます。

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  1. \gt ならば偽物は c_1c_2c_3 のどれかである。偽物の方が重い
  2. \lt ならば偽物は c_1c_2c_3 のどれかである。偽物の方が軽い
  3. = ならば偽物は c_4 である。重さについてはわからない

この結果を順に読んでいきましょう。以下,天秤の図では各場合について本物と確定した(ている)ものを橙色で,偽物と確定したものを紫色で表します。

Case \gt or \lt

この時点ではまだ偽物を特定できていないのですが,重さという重要な情報が得られています。ここまで来てしまえばもう答えも同然でしょう。

続く3回目の測定では,前節の9枚の場合の2回目と全く同じようにして,c_1c_2c_3 の中から偽物を一意に特定することができます。ここで偽物が重いか軽いかが判っていることが効いてきます。

Case =

この場合は,なんともう偽物が c_4 であることが特定できてしまいました。c_1c_2c_3 の重さが本物3個と同じであるということは,それらが本物であることを意味します。よって,一度も皿に乗せていないのもかかわらず,消去法で c_4 が偽物だとわかるのです。

続く3回目の測定では,本物1個(c_1c_2c_3 のどれでもよい)と比較して,偽物の c_4 が本物より重いか軽いかを判定します。

このようにして,1回目の比較で偽物が C の中にあるとわかっているときは,天秤を3回使うだけで偽物を当てることができます。加えて本物より重いか軽いかがまでわかるのです。

1回目の結果が \gt だった場合

簡単な方が片付いたので,1回目の比較で1と2,すなわち,偽物を含む集合を特定できていない場合に取り掛かります。以下では A の方が B より重い場合だけについて議論します。逆の場合は記号を入れ替えるだけで全く同じ議論ができます。ここでも便宜上,銀貨に名前をつけて,A の銀貨を a_1a_2a_3a_4 とし,B の銀貨を b_1b_2b_3b_4 とします。

2回目の測定では,AB から3枚ずつ取り出して比較します。ここでひと捻り加えて,a_3a_4 を右の皿に移し替えて,b_4 以外を天秤から下ろします。左の皿には「本物を1枚,C の中から」加えて数を合わせます。この操作の後では,左の皿には a_1a_2 と本物1枚,右の皿には a_3a_4b_4 が乗っています。天秤に乗っていないのは b_1b_2b_3です。そして,2回目の測定を行います。

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この結果を慎重に読んでいきましょう。なお,左の皿に本物を加えて数合わせしたことは比較結果に影響しないことを断っておきます。ここでも各場合について本物と確定した(ている)ものを橙色で,偽物と確定したものを紫色で表します。

Case =

天秤が釣り合ったということは,両皿に乗っている銀貨はすべて本物であると確定します。よって,偽物は天秤から下ろした b_1b_2b_3 のどれひとつです。また偽物の方が本物より軽いことが確定します。

続く3回目の測定では,その1の9枚の場合の2回目と全く同じようにして,b_1b_2b_3 の中から偽物を一意に特定することができます。

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Case \lt

結果が1回目と逆転したということは,反対の皿に移し替えたものに偽物が混ざっていたことを意味します。よって,a_1a_2 は本物で,a_3 または a_4 のどちらか一方が偽物です。また,どちらの場合も偽物の方が本物より重いことが確定します。A の方が B より重い場合について考えていることを思い出してください。

続く3回目の測定では a_3 を本物1枚(a_1a_2 のどちらでもよい)と比較します。それで釣り合わなかったならば,a_3 が偽物であり,逆に釣り合ったならば a_4 が偽物であることがわかります。

Case \gt

結果が1回目と同じだったということは,移し替えた a_3a_4 および,天秤から下ろした b_1b_2b_3 はすべて本物であることが確定します。よって,偽物は a_1a_2b_4 のどれかひとつです。

続く3回目の測定では,左の皿に a_1b_4,右の皿には本物を2枚(b_1b_2b_3 のどの2枚でもよい)を乗せます。そして,3回目の測定を行います。

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結果を読むにあたって重要なことは,左の皿に乗せた組が本物より重いか軽いかで,どちらが偽物かわかるということです。a_1 の重さは b_4 より重いか,あるいは,どちらも本物のときだけ同じです。よって,左の方が重い \gt とわかった時点で a_4 が偽物であることが確定します。逆に左の方が軽い \lt とわかれば b_4 が偽物であることが確定します。どちらでもなく釣り合った = ならば,両皿に乗っている銀貨はすべて本物であることが確定し,天秤から下ろした a_2 が偽物であることが確定します。これらをまとめると:

  1. \gt ならば a_1 が偽物で,本物より重い
  2. \lt ならば b_4 が偽物で,本物より軽い
  3. = ならば a_2 が偽物で,本物より重い

以上ですべての場合を網羅できました。本節の結論を述べると,銀貨が12枚の場合は,偽物が本物より重いか軽いかわからないとしても,天秤を3回使うだけで偽物を当てることができる。また,偽物が本物より重いか軽いかもわかる。

いやぁ,大変大変。こういうのを sleight of hand と言うのですね。ただ,これさえ片付けば後は楽勝です。

銀貨36枚ならば天秤4回で十分

前節より銀貨が3倍に増え,天秤はもう1回使ってよいことになりました。前節の結果さえわかっていれば,この場合は驚くほど簡単にできます。

方法論は,銀貨3枚を1組にして銀貨1枚と同様に扱うというものです。36はもちろん3等分できて12組に分けることができますね。もし偽物の銀貨1枚が本物より重いとすると,それを含む銀貨3枚の組も,本物だけからなる他のどの組よりも重いこと,そして,そのような組が1組しかないことが言えます。偽物が本物より軽い場合も同様です。これより,銀貨3枚の12組を「超銀貨」12枚と見なしても全く同じ議論ができるのです。

そして,12枚の超銀貨に前節の方法を適用すると,天秤を3回使うだけで偽物の超銀貨を当てることができて,同時にそれが本物の超銀貨より重いか軽いかまで確定できます。

あとは,偽物の超銀貨を3枚の銀貨(1枚だけ偽物を含む)に戻して,残りの1回で偽物の銀貨1枚を当てるだけです。ここで,偽物の銀貨の方が本物より重い/軽いということが,最後の天秤を使う前に確定していることは決定的です。それがわかっているからこそ,1回で偽物を当てることができるのです。

結論を述べると,銀貨が36枚の場合は,偽物が本物より重いか軽いかわからないとしても,天秤を4回使うだけで偽物を当てることができる。また,偽物が本物より重いか軽いかもわかる。

銀貨100枚ならば天秤5回で十分

ついに本題の銀貨が100枚の場合です。ここまで来れば決着も同然と思ったのですが,意外にも足を取られるところがありました。それはさておき,結論を先に述べておくと,天秤を5回使うだけで偽物を当てることができます。偽物の方が重いか軽いかもわかります。

前節の「超銀貨」を思い出すと,100枚の銀貨を12枚の超銀貨(9枚1組)に分ければいいと見当がつきます。ところが,100は12で割り切れないので,そのままでは通らないこともわかります。その場にない銀貨は使えないので,8枚足して煩悩の数にして12で割り切らせることは不可能です。どうする?ツリメデス? ここで足踏みしているうちに,王の気が変わってしまうかもしれないぞ!

というわけで,一時的なものとして,9枚組より少ない組を「不完全超銀貨」として数に加えて,12枚の場合をシミュレートできるかについて考えます。なぜそれを認めていいかというと,最初の比較の時点では,天秤に乗せない銀貨の集合 C は9枚1組の「完全超銀貨」に分けられなくても問題ないからです。もし最初の比較で C の中に偽物があるとわかったならば,天秤に乗せていた本物の銀貨を不完全超銀貨に充当して,次のステップでは完全超銀貨として扱ってやればいいのです。

ここで12枚の場合を思い出すと,最初のステップでは,銀貨を4枚ずつ3つの集合に分けて,うち2つの集合 AB の8枚の銀貨を天秤に乗せ,残りの4枚の銀貨の集合 C を天秤に乗せないとしました。もし9枚1組の超銀貨で同じことをしようとするならば,AB はちゃんと9枚1組の完全超銀貨4枚,つまり36枚ずつでなければなりません。そうすると C には28枚の銀貨が含まれることになります。これを,8枚の完全超銀貨3枚(27枚の銀貨)と,1枚の銀貨だけを含む不完全超銀貨1枚と見なします。

さて,1回目の比較で偽物の超銀貨が AB の中にあるとわかったならば,その後で C の超銀貨を何枚使うかを見直さなければなりません。この方法が上手くいくためには,C の中の本物の完全超銀貨は3枚までしか使えません。というわけで上にスクロールして見るると……「本物を1枚,C の中から」という部分だけで C の銀貨を利用していました。他で本物が必要になった場合はすべて AB の中にあった銀貨を再利用しています。

これより,偽物の超銀貨が AB の中にあった場合は,後のステップでも不完全超銀貨に触れることなく,天秤を3回使うだけで,偽物の超銀貨を当てられることがわかりました。

次に,1回目の比較で偽物の超銀貨が C の中にあったときは,AB の中の本物の完全超銀貨(本物の銀貨だけからなる9枚組)1枚を崩して,C の中の不完全超銀貨に加えて完全超銀貨(偽物である可能性は残る)にしてやります。そうすると,C は揃った超銀貨4枚,うち1枚が偽物の超銀貨で,ちょうど1枚の偽物の銀貨を含む,という集合になります。この後で AB の中の7枚の本物の完全超銀貨を何枚使うかを再び上にスクロールして見ると……「A の中から3枚」だけ利用していました。つまり,この場合も天秤を3回使うだけで偽物の超銀貨を当てられることがわかりました。

以上,元の銀貨100枚を9枚1組の超銀貨12枚に分け,不足分は一時的に不完全超銀貨として扱い,後で本物の銀貨で埋めて完全超銀貨として扱ういう,大変回りくどい方法で上手くいくことがわかりました。

ここまででわかったことは,100枚の銀貨の中から天秤を3回だけ使って偽物の超銀貨,つまりは偽物を含む9枚の銀貨の集合にまで絞ることができる,同時に,偽物の銀貨が本物より重いか軽いかもわかる,ということです。あとは,天秤を2回使ってその偽物を当てるだけです。それは既にその1で片付いています。

以上ですべてが片付きました。結論を改めて述べると,銀貨が100枚の場合は,偽物が本物より重いか軽いかわからないとしても,天秤を5回使うだけで偽物を当てることができる。また,偽物が本物より重いか軽いかもわかる。

かくして,ツリメデスは王を驚かせ,死刑を免れたのでした。めでたしめでたし。

偽物の銀貨を当てろ・その1

12月になりました。これ以上書くこともないので,ひとつの古典的な数理パズルを解いてみましょう。

問題

偽金造りの罪で死刑判決を受けた金物職人・ツリメデスは,今まさに死刑台に登っていた。城下に設けられた死刑台には王も見物に訪れている。ツリメデスは一切抵抗することなく,剣を構えた処刑人の前に縛り付けられた。すると突然,王が「待て」と声を上げ,ツリメデスのもとへと歩み寄り,こんな言葉をかけた:

「職人よ,お前は密告によって罪を得た。しかし,儂はまだその証拠を示されておらぬ。この100枚の銀貨の中に1枚だけ,お前の作った偽物が混ざっているという。ところが,お前の技術の精巧さゆえ,儂にはどれが偽物かまるで見当がつかぬ。聴いたところによれば,偽物は本物と重さが違っていたという。ここに用意した天秤を使って,お前が作った偽物の1枚を当てることができたならば,お前の技と知恵に免じて赦しと残りの99枚の銀貨を与えよう。ただし,儂は短気である。5回のうちに当てられなければ,即ちに首を刎ねる」

ツリメデスには口頭での指示だけが許され,銀貨と天秤の操作は王の付き人が行うこととされた。ツリメデスが自分の手で重さを測ることは不可能である。天秤での比較によってしか銀貨の重さについて知る術はない。

果たして,ツリメデスが必ず生き残る術はあるのか?

問題の条件を抜き出すと:

  1. 見た目の同じ銀貨が100枚ある
  2. 100枚の中の1枚だけが偽物である
  3. 偽物は重さが異なることだけ判っている
  4. 天秤を使って測ることだけができる
  5. 天秤は5回までしか使えない
  6. ツリメデスがツリ目であるか否かは答えに影響しない

このとき,ツリメデスが偽物を必ず当てられる方法は存在するのか,存在するならばどういう手順を踏めばいいか,というのが問題です。運が良ければ,あるいは最悪でなければ当てられるというのは答えになりません。偽物がどれであったとしても,天秤を5回かそれ以下の回数だけ使って,偽物を当てられる方法が知りたいのです。

おっと,自分で考えて答えを出したいという方はちょっと待って。ひとつ明示していない条件があります。それは条件3において,ツリメデスが偽物の重さを知っているか否か,です。本記事で考える問題では,条件3に加えて

3a. 偽物が本物より重いとわかっている 3b. 偽物が本物より重いか軽いかわからない

のどちらかを設定します。3a では「重い」を「軽い」で置き換えても実質同じなので,ここでは「重い」としました。3b の場合の方が難しいことは明らかでしょう。そんなことが可能なのか?という話です。

先に可否だけを言っておくと,

  • 3a と 3b のどちらの場合でも可能
  • その手順を実際に示すことができる
  • 3b の場合は偽物の方が重いか軽いかまで判る

でないと記事になりませんよね。

それでは,自分で考えて答えを出したい方とはここでお別れとします。(・ω・ノシ)З

天秤4回では不可能

王がもっと短気で,天秤で測ることを4回までしか許されなかったら?

残念ながら,その条件では,100個の中から偽物を確実に見つけ出す方法はありません。言い換えれば,ツリメデスがどんな戦略をとったとしても,偽物を一意に特定できない場合が必ず存在します。たとえ偽物の方が重いとわかっていても,です。天秤で測る回数の5回というのは,この問題に解が存在するために必要十分な回数なのです。

そもそも天秤とは何か

天秤を4回使うのでは無理ということを示すには,天秤というものを厳密に定義する必要があります。この問題はなぞなぞの類ではなく,数学的にきちんと書くことができる問題です。ただ,明示しないと気づきにくいことがあるというだけです。天秤を言葉の上で定義すると,次のようになります:

  1. 天秤は左と右に区別された皿を持つ
  2. 銀貨の集合の中から互いに重ならない部分集合を二つ選んで,それぞれ左と右の皿に乗せることができる
  3. 天秤が返す結果は「左の皿の方が重い(>)」,「右の皿の方が軽い(\lt)」,「どちらも同じ重さ(=)」のいずれかである

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重要な,しかし,気づきにくいかもしれないことは,皿には何個の銀貨を同時に乗せてもよい(ただし,同じ銀貨は一度に一方の皿に1枚しか乗せられない)ことと,天秤が釣り合う場合(=)があることです。それらを見逃していると,この節の議論が成立しないばかりでなく,天秤を5回使える場合の答えを得ることもできません。

つまるところ天秤とは,二つの重ならない部分集合を受け取って,記号の集合 R :=  \gt, \lt, = からいずれかひとつを返す関数なのです。ツリメデスは天秤が返した記号以外の情報を得ることはできません。

戦略と行動

ツリメデスは天秤が返した記号の履歴だけを見て,次のいずれかの行動を取ることだけができます:

  1. 次の部分集合の選び方を決める
  2. ひとつの銀貨を指差して,それが偽物だと伝える(終了)

これらの行動の列をツリメデスの戦略と言うことにします。

戦略が以上のように限られているため,ツリメデスが4回天秤を使い終えたときに持っている情報は,天秤が返した記号を4個並べた列 r_1 r_2 r_3 r_4完全に特定することができます。例えば \lt=\gt\lt のように。それらの全体を R_4 で表すことにします。その要素数3^4 = 81 です。ツリメデスはそれだけを根拠にして偽物を判別しなければなりません。実はツリメデス自身も関数だったのです。

ツリメデスが天秤を使った履歴は R^4 の要素であり,出現しない場合も考慮すると,最大で81通りの異なるものがあります。天秤を4回全部使わないで打ち切った場合も,意味のない比較,例えば本物同士の比較(結果は =)で埋めることによって4回の比較とし,その履歴を割り当てるものとします。

証明

見分けのつかない銀貨100枚の集合に仮の番号を振って S_u := { c_1, c_2, \dots c_{100} } で表すことにします。ここで,S_uu は偽物の銀貨の番号です。この集合が S_1, S_2, \dots, S_{100} まで100通りあります。ツリメデスのすべきことは,S_u が与えられたとき,u を当てることです。

ツリメデスの戦略を任意に固定して \mathcal{A} とし,彼が与えられた銀貨の集合 S_u に対して戦略 \mathcal{A} に従った行動をとったときに得られる天秤の結果の履歴を \mathcal{A}(S_u) で表します。これは R^4 の要素です。繰り返し言いますが,ツリメデスはその履歴だけを根拠にして銀貨を当てなければなりません。

偽物の銀貨の番号 u を変えて100通り全部に対して \mathcal{A}(S_u) を集めると,その全体は前小節で与えた通り,最大で81通りの異なるものがあります。あれ?減ってる?

ここで「鳩の巣原理」なるものを使います。なんてことはない,100羽の鳩を81個の巣に入れたら,少なくともどれかの巣には2羽以上の鳩が入っている,という直感的に当たり前の事実です。大変めんどくさくなるので,これ以上厳密な話はしません。

これを適用すると,S_u の全体は u(鳩)ごとに100通りあるのに \mathcal{A}(S_u)(巣)の全体は多くとも81通りしかないので,ある異なった uv(鳩)の組で,\mathcal{A}(S_u) = \mathcal{A}(S_v) となる場合が存在します。何度も言いますが,ツリメデスは天秤の履歴 \mathcal{A}(S_u) だけを根拠にして銀貨を当てなければなりません。するとどうだ!ツリメデスは偽物が uv のどちらなのか判断できないじゃないか!

戦略 \mathcal{A} は任意に固定していたので,任意の \mathcal{A} に対して,それぞれに異なる uv の組が存在して,\mathcal{A}(S_u) = \mathcal{A}(S_v) となります。ややこしい言い方ですが,ツリメデスがどの戦略を取ったとしても,偽物を一意に決定できない場合があるということです。

天秤で測ることを4回までしか許されなかったら,確実に偽物を当てる方法が存在しないということの証明はこれで終わりです。さて,本題に入る前に寝ますか。

偽物が本物より重いとわかっているとき

一眠りしたので続けます。いきなり銀貨100枚の場合を扱うのは大変なので,まずは小さな問題から解いて方法論を示します。本節で扱う「偽物の方が重いことがわかっている」場合には,同じ方法論を繰り返し適用するだけで問題が解けるのです。

この問題を解くために重要なことは,前節の前の方で言った通り,皿には何個の銀貨を同時に乗せてもよい(ただし,同じ銀貨は一度に一方の皿に1枚しか乗せられない)ことと,天秤が釣り合う場合(=)があることです。

本節および次節のすべての場合において,最初のステップでは,銀貨の全体から天秤に乗せるものの集合 AB を取り出します。それらは互いに交わりがなく,必ず同じ枚数の銀貨からなるものとします。残りの銀貨の集合を C とします。C が含む銀貨の枚数は A のそれと異なる場合もあります。銀貨の集合を分けたら,A を左の皿に,B を右の皿に乗せて,天秤を1回使います。

銀貨9枚ならば天秤2回で十分

上で述べた通り,最初に銀貨全体を3つの集合に分けます。この場合には綺麗に3等分できるので,同数の銀貨3枚ずつを任意に取り出して ABC に分けることにします。そして,天秤で1回目の比較を行います。

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ここでは偽物の方が重いことがわかっているため,比較結果から次のように判断できます:

  1. \gt ならば,偽物は A の中にある
  2. \lt ならば,偽物は B の中にある
  3. = ならば,偽物は C の中にある

これで偽物が含まれる集合がわかったので,2回目はそれだけについて考えます。他の集合には本物の銀貨しかありません。この事実は後々重要になってきますが,今のところは必要ないので,考える対象から外します。一般性を失わずに,偽物が A の中にあると仮定します。

2回目は A に対して最初に行ったのと同様に3等分します。A に含まれるのは3枚の銀貨だけなので,3等分すると銀貨は1枚ずつになります。それらを abc とします。そして,天秤で2回目の比較を行います。

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1回目と同様に,比較結果から次のように判断できます:

  1. \gt ならば,a が偽物
  2. \lt ならば,b が偽物
  3. = ならば,c が偽物

Εὕρηκα!

天秤に乗せた銀貨も残りの銀貨も1枚ずつだったので,これで偽物の銀貨を一意に特定することができます。

以上の通り,銀貨が9枚のときは,天秤を2回使うだけで偽物を当てる戦略を与えることができました。

銀貨27枚ならば天秤3回で十分

前小節で示した方法論は,そのまま銀貨が27枚,つまり9枚の3倍の場合に適用できます。

最初に銀貨全体を3等分して9枚ずつの集合に分けます。そして,1回目の比較で偽物を含む集合を特定します。

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  1. \gt ならば,偽物は A の中にある
  2. \lt ならば,偽物は B の中にある
  3. = ならば,偽物は C の中にある

後は,前小節でやったように,9枚の銀貨の中から天秤を2回使って偽物を当てるだけです。

Εὕρηκα!

以上の通り,銀貨が27枚のときは,天秤を3回使うだけで偽物を当てる戦略を与えることができました。

さらに言えば,同じ戦略を繰り返し適用することにより,天秤を n 回使うことによって,ちょうど 3^n(3のべき乗)枚の銀貨の中から偽物を当てることができます。例えば,天秤を4回使うと81枚,5回使うと243枚といった具合です。証明は数学的帰納法によります。

銀貨100枚ならば天秤5回で十分

前小節の最後の事実から,銀貨が100枚の場合,天秤を5回使うだけで偽物を当てることができる,と確信を持てるでしょう。とは言うものの,100は3のべき乗ではないので,細かい修正が必要になります。つまらない話ですが,完全な答えを得るためには,100枚でも上手くいくことを示さなければなりません。

まずは一般論に従って銀貨の集合を3つに分けます。これまでのように3等分することは不可能なので,分け方を変えてやる必要があります。天秤に乗せる集合 AB には同じ数の銀貨を割り当てなければいけません。

ここでは,100枚の銀貨から AB にそれぞれ27枚ずつ,C に残りの46枚という分け方をします。天秤に乗せる方を27枚ずつにしたのは,前の結果をそのまま利用するためであって,本質的ではありません。そして1回目の比較を行います。

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  1. \gt ならば,偽物は A の中にある
  2. \lt ならば,偽物は B の中にある
  3. = ならば,偽物は C の中にある

ここで偽物を含む集合が A または B だったとすれば,偽物を含む集合はちょうど27枚の銀貨からなります。よって,前小節に従って天秤を3回使って偽物を当てることができます。その結果,全体では天秤を4回使うだけで偽物を当てることができることがわかります。

Εὕρηκα!

残すは C(46枚)の中にある場合です。46も3等分できないので少し面倒です。そこで,いっそのこと81枚に増やして3のべき乗にしてやります。A または B に含まれる銀貨はすべて本物であることがわかっているので,それらを C に加えても何の問題もありません。C に35枚の本物の銀貨を加えて81枚としたものを,次に考える集合とします。

異議あり!集合に銀貨を足すという操作は,ツリメデスには許されていないのではないか?

問題ありません。C に他から銀貨を加えるという操作は,100枚全部の中で集合の分け方を変えることで実現できます。一旦は C に注目しつつも,全体が100枚であることに違いはないので,他の銀貨は何度でも利用することができるのです。言葉では煙に巻くような言い方になりますが,あくまでツリメデスが行うことは,次に天秤にかける集合とそれ以外の集合を分けるだけです。

ただし,与えられた100枚以外の銀貨を使うことは,この問題では許されていません。実際,それは集合の分け方を変えるだけでは実現できません。その場にないものは使えないのです。

一応断っておくと,偽物の方が重いとわかっている場合は,このように他の集合から銀貨を持ってくる必要はありません。先に示した結果を利用するためと,もうひとつ,既に本物とわかっている銀貨を再利用してもよいことを明らかにするために,あえてこの方法を選びました。

ここまでの反論を終えて,改めて C に本物の銀貨を加えて81枚としたものを次に考える集合とします。前小節の最後の事実から,ちょうど 81 = 3^4 枚の銀貨の中から偽物を当てるには,天秤を4回使えばいいことがわかっています。

従って,偽物が C に含まれるとしても,最初の1回の比較と,81枚からの4回の比較を加えて,天秤を5回使うことによって偽物を当てることができます。

Εὕρηκα!

以上の通り,最初の比較で偽物が ABC のいずれに含まれていたとしても,天秤を5回(または4回)使うだけで偽物を当てることができることが示されました。

改めて言うと,偽物が本物より重いとわかっているとき,偽物を1枚だけ含む100枚の銀貨に対して,天秤を5回使うだけで偽物を当てることができます。

一時中断,それと,ここまでのまとめ

今回は何かしら記事を書かないといけないと思って,「偽物の銀貨を天秤だけを使って最小の比較回数で当てる」という古典的な数理パズルを扱いました。それに具体的な数字を入れて「100枚の銀貨の中から天秤を5回だけ使って偽物を当てる」ことを目指しました。

ここまでの話では,天秤を4回以下しか使えない場合は,どんな戦略を取っても偽物を一意に特定できない場合が存在することと,偽物が本物より重い(または軽い)とわかっている場合,100枚の銀貨の中から天秤を5回だけ使って偽物を当てる方法を示しました。

残すは偽物が本物より重いか軽いかわからない場合でも,同じく天秤を5回使って偽物を当てることができることを,実際に方法を与えて証明することです。

本当は全部一度に書きたかったのですが,長くなりそうだったので記事を分けることにします。ここまで読んで改めてその問題に挑戦したいと思った人は,筆者が次の記事を書き終えるまでにやってみてください。